玄関の扉が閉まった音が、やけに長く尾を引いた。
あいつは出て行った。振り返りもせず、当たり前みたいに。残されたのは、薄っぺらい置き手紙と、妙に整った部屋だけだ。
――好きな人ができました。もう戻りません。
軽すぎる一文。だが、その裏に何があったか、俺は知っている。
帰りの遅さ、逸らす視線、伏せられたスマホ。問い詰めれば「疑いすぎ」と笑い、やがて面倒そうにため息をつく。
「……だから何?」
あの一言で、全部が壊れた。
悪びれもしない顔。「もう無理」と言い切った声。積み重ねてきたはずの時間を、平然と切り捨てる態度。
怒鳴った記憶だけが残っている。割れる音、ぶつかる言葉、冷えた目。
そして今、誰もいない。
「……勝手にしろよ」
吐き捨てても、何も変わらない。怒りは行き場を失い、内側で濁るだけだ。
何が足りなかったのか。最初からこうだったのか。
答えはない。
「……くそ」
拳を握ったとき、背後で声がした。
「パパ」
振り向くと、娘が立っていた。
――笑っていた。
場違いなほど穏やかな、にこやかな表情。何もかも見透かしているようで、妙に落ち着かない。
「……起きてたのか」
「うん」
軽く頷く。その目には動揺がない。
「……出ていった」
空虚な声で告げると、娘はあっさりと言った。
「そっか」
それだけだ。
驚きも、悲しみもない。ただ、受け入れている――いや、それ以上に。
「……なんだ、その顔」
思わず聞くと、娘は少し首を傾げてから、くすっと笑った。
「だって」
一歩、近づく。
「二人きりになったね」
言葉の意味が、ゆっくり沈む。
「……何言ってる」
「そのままだよ」
さらに距離を詰める。
「もう、パパと私だけ」
軽いはずの言い方が、妙に重い。
胸の奥で、別の感情が動き出す。
「寂しいでしょ?」
やわらかい声。
「見てたら分かるよ」
逃げ場のない距離で、娘はにこにこと笑う。
その笑顔が、さっきまでの怒りとは違う形で、心をかき乱す。
「だからさ」
少し間を置いて、
「私が慰めてあげる」
思考が止まる。
ただの言葉のはずなのに、妙に引っかかる。
「……お前」
言葉が続かない。
娘は気にせず、当たり前のように言う。
「パパ、今空っぽでしょ」
否定できない。
「いいよ」
優しく、軽く。
「埋めるの、手伝うから」
その一言が、やけに残る。
違和感は消えない。だが同時に、何かがそこへ引き寄せられていく。
「だからね」
娘は穏やかに言った。
「遠慮しなくていいよ」
その笑顔の意味を、俺はまだ、理解できていなかった。
そんなシチュエーションのCG集です。
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画像サイズ:1400×1000px
本作品に収録されている画像はStableDiffusionを用い、AI生成した画像を加筆・修正しています。