玄関のチャイムが鳴るよりも早く、妹はドアノブに手をかけていた。
まるで来客のタイミングを予知しているみたいに、軽やかに扉を開ける。
「いらっしゃい。兄さんの友達でしょ?」
その声音は、やけにやわらかい。
甘いというより、安心させるために整えられた声だ。
初対面のはずの相手でも、彼女の前では妙に肩の力が抜ける。
俺はその様子を、リビングの奥からぼんやり眺めていた。
「……またかよ」
思わず漏れた独り言に、妹は振り向きもせずに手をひらひら振る。
「だって困ってるんでしょ? 紹介するって言ったの、兄さんだよ」
たしかに、きっかけを作ったのは俺かもしれない。
サークルの連中が、妙にぎこちない空気をまとっていたのを見て、冗談半分で「うちの妹、そういうの慣れてるぞ」と言った。
それを真に受けたのか、あるいは都合よく利用されたのかは分からない。
ただ一つ言えるのは――あいつは、本当にそれをやるということだ。
妹は昔から、人の懐に入り込むのがうまかった。
押しつけがましくもなく、距離を詰めすぎることもなく、でも気づけば隣にいる。
相手が何を欲しがっているのか、言葉になる前に察してしまう。そういうところがある。
だから、あきれている。
他人の面倒を見るのは勝手だが、わざわざ俺の周りのやつらにまで手を出す必要はないだろうに。
いや、‘手を出す’なんて言い方は語弊があるか。
あいつはただ、困っている人間を放っておけないだけだ。たぶん。
「兄さん、ちゃんと紹介してよ。名前くらい」
玄関のほうから声が飛んでくる。
仕方なく立ち上がり、廊下に出ると、見慣れない顔がひどく緊張した様子で立っていた。
そりゃそうだろう。こんな状況、普通は想定しない。
「……こいつ、大学のやつ。まあ、いろいろ不器用でさ」
適当な紹介に、妹はくすっと笑う。
「大丈夫だよ。不器用な人、嫌いじゃないから」
その一言で、場の空気が少しだけ緩む。
魔法みたいなものだと、毎回思う。
俺は壁にもたれながら、二人のやり取りを眺める。
あきれ半分、呆然半分。そして、残りは…少しだけの感謝だ。
あいつがいなければ、俺の周りの連中はずっと同じ場所で足踏みしていただろう。
前に進むきっかけを、自分で掴めないやつもいる。
そういうやつにとって、妹みたいな存在は、たぶん救いになる。
「ねえ、兄さん。次はどんな人?」
振り返った妹が、いつもの調子で問いかけてくる。
まるで、それが当たり前の日常であるかのように。
俺は小さく息をついて、肩をすくめた。
「……ほどほどにしとけよ」
その言葉に、妹は満足そうに笑った。
そんなシチュエーションのCG集です。
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本作品に収録されている画像はStableDiffusionを用い、AI生成した画像を加筆・修正しています。